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近年,⽇本におけるホームレス数は減少傾向にあるが,路上⽣活を離脱した後に再び路上へ戻る「再路上化」は依然として重要な課題である.厚⽣労働省(2021)によれば,ホームレスの約 3 割が過去に施設・アパート等へ移⾏した経験をもち,60 歳以上が約 7 割を占める.とりわけ⾼齢層は,⾝体機能の低下や就労困難,⽣活管理の脆弱性が重なり,再路上化に⾄る可能性が⾼いと⾒られる.⼀⽅,再路上化に関する研究は施設から退所までのプロセスに偏り,アパート⼊居後に再路上化へ⾄るプロセスは⼗分に検討されてこなかった.
そこで本研究は,⾼齢ホームレスのアパート⼊居後に⽣じる「再路上化」と「⽣活定着」の分岐要因を明らかにすることを⽬的とする.
調査は⼤阪市⻄成区で実施し,半構造化インタビューにより,⽀援実践に関わる 2 名(⽀援団体担当者,アパート管理⼈)と,アパートで⽣活を継続する⾼齢の元ホームレス2 名から聞き取った.⽀援者から得たアパート退居・再路上化 3 事例の経緯を整理し,当事者 2 事例の⽣活実態とあわせて⽐較検討した.分析の結果,アパートからの再路上化は,①⽀援介⼊が「監視」や「束縛」と受け取られる過度な介⼊,②近隣トラブル,③⽀援者との信頼関係の⽋如,という 3 要因を抽出していた.特に路上⽣活を離脱の契機に「外圧」が作⽤する場合,⼊居後の不安定さが増加し,介⼊が許容範囲を超えると「⾃由」の奪還として再路上化が選択されやすい.他⽅,⽣活定着には,プライバシーが確保された居住環境,柔軟な規則運⽤,⾃⼰決定の尊重,伴⾛的で介⼊頻度を調整した⽀援が重要であった. 以上を踏まえ,施設と⼀般アパートの選択に代わる「第三の選択肢」としての⽣活サポート付きアパートの整備等,⼊居後⽀援のあり⽅を提⾔し,⼊居後⽀援における距離感の調整と信頼形成を優先する必要性を⽰唆した. |